死者の息/
服部 剛
死者と語らうには、飲むことだ。
向かいの空席に
もう一つのお猪口(ちょこ)を、置いて。
自分の頬が赤らむ頃に
あたかも体の透けた人がいるかのように
腹を割り、肝胆を晒すのだ。
語らう内に…この世の自分という役が
物語に置かれた
ひとりの駒に―視えてくる。
明日のシナリオなんぞは
思い煩うことなかれ
日々の暮らしの一コマを
余白にして
(忘れた頃にやってくる)
死者の息吹が、吹くように
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