風の寅次郎/服部 剛
ってきて
僕のほっぺに冷たく落ちた
打ち上げをしている近所の飲み屋から
漢字の違うふたりのはるちゃんが
僕を迎えに来てくれた
ふたりの後についてゆき
僕は後頭部をさすりながら
皆のいる飲み屋の暖簾(のれん)をくぐった
カウンターに並んだ無人の椅子には
とらさんの面影がひとり座って
酒を飲んでいた
店内に流れる有線放送の音楽は
SMAPの、友達のうたがさわやかに流れていたが
僕の胸の内側では
何故か
「今日も〜涙の陽が落ちる・・・」 *
と、とらさんの歌声がいつまでも流れていた
江戸川の水面にゆらめく夕陽のような
胸にしみる
あの あたたかい 歌声が
* 映画「男はつらいよ」のテーマソングより引用。
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