『たとえば キスできる範囲にいること』/座一
 


「仕事、首になった」
今にも泣き出しそうな顔で、
「別れてもいいよ」と言ったきみ


半年探して やっと仕事が見つかったから
長い間 待たせてごめんねって
プロポーズされた 矢先のことだった


六畳間に ぎっしりの家財道具
かろうじて 2組ひける布団
それでもきみの腕枕が 心地よくて
けっきょく朝まで 分かれて眠ることはなかったね


欲を言えば
まだまだ おしゃれしたいし
週末は外食したいし
もっと頼れる人になってほしいとか
いろいろ浮かんでくるけれど


一緒に過ごして 8年目
何度もあった 別れの危機
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