喉/
あおい満月
呼ぶ声の向こう側には
私はいない。
呼ぶ声の内側に私がいる。
声の内側は、
鮮やかな肉で、
血を吹きながら擦りきれている。
擦りきれた肉の隙間に入る風は、
冷たく心地よい。
無関心に通りすぎる足音が、
叩く扉の鼓動は、
いつでも体温を呼びに来る。
呼ばれた体温は、
血の火花を孕み、
冬の朝に咲く花火になる。
火花は誰からも拒まれるから、
風になりその喉を焼く。
焼かれた喉は血を吐きながら、
また違う誰かの背中を狙っている。
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