街/あおい満月
風を知らない無知な私を、
笑う子どもがいる。
子どもは殖えていく。
げらげらからから、
騒ぐ鰐の口になって、
私を咀嚼する。
咀嚼されながら私は、
私から反時計回りにまわる
星の輝きを見つめていた。
気がつくと夜の車内にいる。
誰もが皆鏡をみている。
美しいようで、
少し気持ちが悪い。
人びとの、
欠けた血の塊を、
笑いながら撹拌する姿や、
異国語を内耳に突っ込みながら、
叫んでいる姿を見ていると、
呑み込んだ筈の鶏肉の皮さえ
吐き出したくなる。
ここでは、
犯してはいけない不自由などないのか。
誰もかれもの笑いがさんざめく、
この街で。
擦りきれて赤い手をした
少女が配る鼻紙。
真っ白なそのうらに書かれた、
一回500円のゴシップ。
何が一回500円なのか。
少女の手よろしく、
私の手も擦りきれている。
自己中な客の注文に、
何百という書類を書いて。
子どもがぺっと唾を吐く。
そのなかにさかなになった、
私がいる。
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