俯角の心臓/北街かな
 
淀みの中に心臓をふかく落としてしまった
不確実な手放しの感触と
俯角の鈍さに たゆたいながら

海水面ではずっと光が音を奏でていたのだ
遠い太陽には眩しい響きが共鳴していて
届かない明るい場所を楽しそうに盛りあげていた
それはいわゆるひとつの宗教で
誰もがみな、その共同認識に血と熱と骨を揺らし
繋がりあい
無害な安息をみせびらかしあっていた

錆びた公園で三十年前の焼死体を見ている
彼女は精神的苦痛を理由にして肉体的苦痛を選んだ
最も苦しい手段を振りかざし熱と絶叫が彼女を殺した
不安のなかに穏やかなものが徐々に吹き込んでくる
空想の死を繰り返していくつもの星も割れ電
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