針先/あおい満月
私は部屋の隅にあった、
鍵穴のような小さな穴を覗く。
ぐりぐりぐりぐり、
視線の針先が穴をまさぐる。
私はその触覚が擦れあう音のような、
快感に歓喜する。
ぐりぐりぐりぐり、
歓喜と狂喜が交互に手を取り合い、
笑いたくもない私の唇を三日月に
なぞる。
手を伸ばした闇のなかで
もうひとつの手にでくわした。
手は叫んでいる。
(もう少しだ、がんばれ、
この手を離すなよ!)
私はどうやら、
小さな子どもになって、
この鍵穴のような空間に
閉じ込められてしまったらしい。
誰かの呼び声が、
私の肩を光りさす方へと導く。
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