鎖/あおい満月
カレーやシチューのなかの、
人参を退けるように、
誰もこの胸のなかの、
核心に触れてはくれない。
鋭い針は持っている筈なのに、
射し込む場所を間違えている。
それはそう、
嘗てのあの人もそうだったから。
*
思い出すのはいつも、
夏の海と古いマンションの居間だ。
あなたは眉間にいつも皺を寄せながら、
私に解読不能の難解知識と説教を
繰り返した。
あなたは小学校の頃の、
私がよほど気にくわなかったのだろう。
当時、漫画ばかり描いていた私の算数の点数は50点未満だった。
国語より算数が得意だったあなたは、
私に向かい、
「いいか、今度こんな点数を取ったら
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