傘/あおい満月
 
覚えている。
私がまだ幼かった頃の、
あなたはいつも、
降り続く雨と闘っていた。
雨は黒い石を含みながら、
あなたの肩を濡らした。
まだ幼かった私はただ、
呆然とその姿を眺めていたけれど。

あなたはどんな小さな悪も、
赦そうとはしなかった。
いつだったか、
テレビで北海道のアイヌの人たちが
前後40年以上経ったあの当時でさえ
未だに差別に遭っているという報道を
目の当たりにした時だ、
小学四年生ぐらいだった私の口から、
林檎の欠片が落ちるように、
思わず「アイヌだって、お母さん 」
と口にした瞬間、
あなたから言葉の一
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