廃墟徘徊/陽向?
 
七歳の頃五十年前と聞くと古い民家が浮かんだ
その古い民家の中に入ると壁に御札がはってある
日本人形があり埃かぶった和菓子の箱もある
この民家には悪霊がうようよといて
その中に白い着物を着た皺だらけの顔のお婆さんがいる
よく井戸から水を汲んできてそのお婆さんに飲ませたものだ
そのお婆さんは私を睨みながら水を飲む
口を赤いハンカチで拭い暫くすると姿が段々ぼやけて消えてしまう
私はこのお婆さんはお墓の元へ帰っていくのだと思っている

その後道を歩いているといつも大きな建物の廃墟へ着く
廃墟の中の床に五十年前の新聞紙が散らばっている
泥水で床は濡れていてここにも悪霊がうようよいる
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