カンヴァス/あおい満月
冷えた夜に冴えた月を眺めながら、
あなたを思い浮かべる。
私は窓の鏡のなかで、
薄皮を剥いでいく。
あなたの鼓動が私の身体に触れる。
私は刹那に哀しくなる。
歓喜に触れて哀しくなる。
私など、
あなたのカンヴァスに
描かれて良いのかと。
あなたは月のような目をして
注意深く私を描く。
細く白く長い指先で。
あなたの指先が、
私の内部を貫いていく。
私しか知らない筈の部屋の鍵を抉じ開けて。
けれど、
私は怖くはない。
あなたに寄り添う私の体温は、
すべてを知っているから。
私たちの前には道はない。
けれど軌跡は必ず残しているから。
あなたと刻む時間の一瞬一瞬に、
愛を込めて。
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