忘却/鷲田
 
明け方 季節を忘れた
冷え行く寒さの中で
冬は姿を消し
沈黙は空気を透明に染めた

朝 差し込む光を浴びて
言葉を忘れた
荒涼とした会話が砕かれ
鳥の鳴き声は静寂に木霊した

昼 陽気の豊かさに
記憶を忘れた
青春の力は未来を恐れ
やがて来る平和に憧れを抱いた

夜 空の星の光の瞬きに
時間を忘れた
時計の短針は長針に戸惑い
物語は転結を捨て去った

就寝 都市も自然も眠りにつき
忘却することを忘れた
二人の大切な人が側から
愛を私に教えていた
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