空席/為平 澪
 
晴れた日の会場内に 用意された百脚の椅子

来賓者、関係者、招待者、出席者、
名簿に記載された ずらりと連なる固有名詞

司会者は叫ぶ
(百人満席、晴れた日に、)
新聞は語る
(百人聴衆、晴れた日に、)

けれど
後ろから二列目
左端から並んで三つ
三つの席に雨が降る
印字された連名から はぐれて
ペラペラになった紙同様 役に立たないと?がされて
どこかに飛ばされてしまった人の、かなしみを
横目でチラリと眺める人の、高笑い

九十七人しかいない晴れた日の場内の、その隅で
冷たい雨は降り続く

晴天の宴は記事になり 朝夕を陽気に色濃く飾ったが
閉ざされた会場の椅子にまだ 
湿っぽい、かなしみたちが忘れられ
滲んだままで 座り続ける

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