箱/あおい満月
ろと。
私も当時は同感した。
*
ある秋の日、
私はその男と二人きりで、
ある反戦映画を観ていた。
それには理由があった。
その映画の鑑賞会を主催したのは、
私だったから。
某詩人の会の企画を私が立て、
希望者は彼だけだった。
その男は泣いていた。
罪なき主人公が、
A級戦犯として絞首刑に処される姿に、
私も泣いた。
主人公の妻が集めたという無罪の書名の行方に。
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その男が映画に泣いた理由に、
私は口が半開きになった。
その男は映画の主人公が
戦犯で処刑されたのではなく、
あんな時代に生きて、
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