箱/あおい満月
(この男、殺したい )
私がはじめて、
胸のなかにナイフを握ったのは、
まさにこの瞬間だった。
その男は私に出会うやいなや
(アオイサンテ、
ソノ足ハ障害ナンデスヨネ、
トイウコトハ、就職ハ障害者雇用…)
あの!
思わず叫んでしまった。
某詩人の会の例会で。
その男は私と同い年、
いつも、夏は白いシャツ、
冬は黒いコートを着て。
虚ろな目で私を見ていた。
私には彼氏がいた。
彼はその男を悉く蔑んだ。
詩心のないただの学歴主義者だと、
彼みたいな男は詩人は辞めて、
黙って大学の研究室に籠っていろと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)