YOKIKANA/山田せばすちゃん
 
おそらくは初春を迎へることも叶ふやら叶ふまいやら 
よきかなよきかな 
燃しものつきたあばらやで 
綿の千切れた懸けものを着て 
明ければ雪に成るのでせうか 
大きく咳き込んだわたくしの 
口からあふれる眞つ赤な血 
わたくしはとにもかうにも身を起こし 
西に向きなほつて兩の手を併せ 
六字の名號を唱へるのです 
よきかなよきかな 
これでようやつと 
皆の待つ彼岸へいける 
ちちさま、かかさま、あにさま、あねさまが 
西方淨土の蓮のうてなで 
わたくしに早くおいでと手招きをして 
なむあみだぶつ 
よきかなよきかな 
               
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