赤いルビ/もり
本屋の倉庫で縦横30センチあるかないかのすき間に両足をそろえ腰を下ろし一心不乱にバーコードを読み取っていた 非文明人がはじめてやるテトリスのようにだいたいの本が気を失っていた おれはそのひとつひとつに投げやりな「おはよう」をくり返しながら 自分がDr.でないことを黒い靴下で懸命にアピールしてみた
今、
大地震が起こって
そいでもって隣で汗をかいている 棚卸アルバイト駆け出しの女の子が 血を吹き出したとき おれは
面前の詩集23〜50Pを破りとり
彼女の傷口を押さえてやれるだろうか
それとも15Pあたりの一編をチョイスしてはつとめて冷静に読み聞かせるのだろうか
現場責任者を呼びにいくだろうかバルサンを焚かれた害虫のように赤いルビをふって
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