真昼の肝試し/くろねこ
久しぶりに戻ってきた郷里は
なかば廃村となっていた。
秋の陽気に誘われるまま歩を進め
廃校の門をまたいだ。
建替えられた校舎は馴染みなく
ほどなく廊下に迷った。
誰もいないはずの教室は
無音の気配に満ちていた。
じっと見詰め返してくる
写真の中の歴代校長たち
冷めた眼で見詰め返してくる
卒業制作の石像たち
それぞれがあらぬ方向を見やっている
真黒にすすけたトーテムポールたち
風雨にさらされ力つき
今にも膝折りそうな朽ちた遊具たち
校庭の、かつて希望に満ちて
飛び立つ風を待っていた綿毛たちは
その機会をのがし
とうの昔に干涸びていた。
そうだ風を起してやろう。
今度こそ飛び立てるだろう。
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