ちぎり/あおい満月
誰がさまようというのだろう。
この名もない路地を。
名もない路地には、
ひと影はなく
だから名もない路地と
なったのであろうが、
名もない路地には、
人影は確かにあった。
その人影は、
他の誰にも知られることはなかった。
*
古びた街角の路地裏に、
血のついた足跡が
昔あったという。
今でもその街角に住む住人に
聴いてみると、
昔、
二人の侍が、
互いの肩を切りあったという。
来世でまた出逢った時に、
互いを忘れぬように。
**
年の瀬のネオンが煌めく繁華街で
ある男に出くわした。
俺はその男を知らなかった。
けれど何故だかどこか懐
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