Miz 11/深水遊脚
 

「訓練の些細なことまで俺に報告が行くようにしたのはあんただろ?ほかの訓練生でこんなことはなかった。なぜ須田だけこうなんだ?」
「何?その迷惑そうな言い方。真水さんだけでなく、ほかの訓練生についてもこんなふうにフィジカルとメンタル両面のコンディションについて情報を共有して行こう、という発想は出てこないの?たいして処理する情報が増えるわけではないし、思い込みによる人物把握が客観的な事実に置き換わるのは結構なことよ。あんたは勘で何もかも決めつけすぎるの。」
「いちいち話を刷り変えるな。そんな構想があるなら、ちょこまかと思い付きでやるんじゃない。計画を提出して筋を通せと言ってるんだ。上が思い付きで引っ掻き回したら下が混乱するんだ。」
「いつも通りのことを何も考えずにしたい。そんな欲求、守るに値しないのよ。差し迫った危機の前にはね。それが潜在的な危機なら情報を持ち寄って皆で話し合って決めるというわけには行かないわ。そんなことをしても、 間違った決定を導き、固定してしまうだけ。」

声の質が変わっていた。俺は相槌を止めた。短い沈黙を挟んで春江は続けた。
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