大樹/あおい満月
あなたは今、
いろいろなことばの海を
旅したいと思っている。
そこには淡い色の薔薇の花束のブーケだったり、
あたたかな木のぬくもりの漂うキッチンだったり、
そんな風景が香ることばを探している。
けれども、
そんなことばたちは、
綿菓子みたいなもので、
口に入れた瞬間、
冷えた蝋燭に変わってしまう。
*
バッグに入れたはずの鍵を
家の食器棚に忘れた。
たまたま気がついたから良かったけれど
もしも、これが骨がひしめきあう
段ボールの中だったらと思うと、
あなたの顔は橙色になる。
走馬灯になったあなたは、
濁る濁流を泳ぎきり、
小さなインターフォンを
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