展覧会/鷲田
苦しみは夜のネオンに芽生え
朝の日常に消える
そうして透明な世界は回ることができる
迷いは夜の闇に映えて
朝の陽光に存在を消す
そうして各々の生活が回り始めることができる
一人の人間の感情は世界には映らない
社会は構図された機械で
歯車を回すのが人々の役割
感情は寧ろ
脳裏の狭間に泳ぐ
イメエジされた抽象画
私達はそれを表情と言葉を通じて鑑賞している
一つの抽象画は
多くの物語と多くの理由を抱え、描かれている
それらの一つ一つの画が
人間の持つ代わりのない個性
悲しみや苦しみは悪ではないのだ
それは例えば緑色の渦巻きであり茶色の鋭角
喘ぎや嘆きは虚ではないのだ
それは例えば赤色の楕円であり黄色の線形
ガラスの響きを繰り返し鳴らし
歩んでいく人間と感情が一つ
人はか弱く力強い
人は繊細で鈍感だ
無数の展覧会が開かれる都市の中
ある日の夜の闇
ある日の朝の光
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