耳/あおい満月
 
黒く透明な魔物にとりつかれた指は、
もう止まらない、
もうもどらない、
指が進む先は、
まっすぐ なようでかなり
曲がりくねっている。
指には耳がある。
かなりたくさんの耳だ。
無数の耳から聴こえてくる音は、
善悪の天秤を狂 わすほ ど強烈で、
私の顔はどんどん立てになる。

*

嘘つきな液体を喉に流し込んだ。
それだけで生まれたままの貝になった。
貝には進むべき視線という足がない。
だらだらと水を流しながら、
思い出したように笑ってみる。
摘ままれそうな黒い左手に、
身を翻して、
流れていくお決まりな
タラップをみている。

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変動を持
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