シーツ/あおい満月
 
ことばを欲しがる指先が、
熱を帯ながら、
水面をぴしゃりはねる。
指先の熱が水を伝って、
水面に映りこむ私の唇に話しかける。
熱は針のように鋭い薔薇の棘になって、
私の唇を抉じ開け、
舌の海を泳ぐ。

*

何かがたりない、
開くページには、
既存の迷路が描かれている。
私は、その迷路は通れない。
何度も抱き合っては汚してしまう
シーツのように、
また別の迷い道をつくってしまう。
迷い道で一輪の赤い花をみつけた。
花はうたう。
(わたしを摘み取ってください)
花を摘み取った瞬間、
赤い花は血のワインにかわり、
私の指先の皮膚から心臓へと
旅をはじめる。

**

ことばの棘ばかりを、
探しながら巡回するこの脳髄は、
右から左、左から右、
上から下、下から上、
ある一定のリズムを構築したがる。
時々、
誰かの手を握りすぎて、
ぎゃっ、と爪を立てられる。
けれどいつもその瞬間を
陽だまりとして愛してしまう。
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