単身赴任。/梓ゆい
 
それは全て愛だった。
それは全て愛だった。
 父が少しずつ貯めた積立金。
 何かの足しになるようにと内緒にした
大きな空き瓶いっぱいの小銭。
 「銀行に持っていったら、8万円になっていたよ!!」
 父は弾んだ声で母に電話をした。
ただ働くのでは無い。
ただ時間を売っているのでは無い。
 家族の幸せをより願いながら
毎週月曜日の朝7時
 新宿行きの特急電車に乗る。
ゆっくりと閉まる自動ドア
席に着くまで手を振るよ。
それは、全て愛だった。
それは、全て愛だった。
 「このお金を少しでも良いから、役立てなさい。」
 無駄にするつもりは無い。
 粗末にするつもりも無い。
それは、全て愛だった。
それは、全て愛だった。
 「それらは全て、愛情の証だった。」
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