うつほ/レモン
 
 

ゆけなかった

ひび割れた空のかけら
拾い集めて
黒曜をながした月光
あなたのような
静謐
いだかれながら
緩やかに枯れてゆく
水底の
片羽根なくした
蝶を

想った

緑は虚しく囁きかける
深い杜で甘い果実を
絡めるように
溶けあって食べてしまった
密やかな
行為の

代償

失うことは
こわくなかった
怖かったのは


満ちてゆくこと



溺れてしまえば
パウダーシュガーで
窒息しそう
抱かれるたびに
線香花火の散り消えるさま
季節外れの螢にも似て
ふるえながら
強く弱く
次第に遠く
とおくとおく
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