聖夜の空に 〜’04 12/24 @ Sibuya〜/服部 剛
今年も忠犬ハチ公の周囲には
いくつもの吊るされた
ハート型のイルミネーションの下で
サンタのおじさんがテレクラの
ティッシュを配る
スクランブル交差点の信号が青になり
流れゆく恋人達は
それぞれの肩のすき間に
白い吐息を浮かばせて
クリスマスツリーの
光る並木道の向こうの闇へ
いつか一人残らず吸いこまれてゆく
自らの宿を探して歩く僕は
シャッターの下りた
店と店の間に伸びる細い路地に座り
膝(ひざ)に顔を埋めて震える老婆を横目に
北風が自らの首すじに忍び込まぬよう
手袋の手で隠しながら
老婆の残象を脳裏に
通り過ぎてゆく
いつか愛した人
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