衣/もり
 
ガラステーブルの上にコツン、と起き目を閉じた。
翌朝。瘴気に包まれた駅のプラットホームでネクタイを忘れたことに気付く。分別が徹底されるようになった街で、都市の幸がなくなったとチンバの男が泣いている。Wi-Fiが自動接続されたのが見える。
「yumi_sator_i」
それがドイツへ留学しているはずの彼女のものであるという事実をおれは摩耗したレール上に乗せる。
何てことはない。メチレンブルー水溶液のように冷たい警笛が赤いランドセルの少女の頬をくすぐった。
まだビニルの臭いがする五体の人形から初老女の指紋を検出するのにそう時間はかからないとまた、おれはいつものようにキメた。



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