飛びつきながらボールをさばくぼくらの姿は/天野茂典
 
  ノックを受けた
  10本 50本 100本
  陸上競技場でだ
  打っているのは父だ
  容赦なく短いボールや
  横へのボール
  前と後ろのフライ
  ショートバウンド
  父のノックは続いた
  ぼくのからだもしなやかに
  ボールについていった
  父は店をサボって
  バイクの後ろにぼくを乗せて
  やってきたのだ
  父と子の1000本ノックとまでは行かないが
  打って打って打ちやまぬ父と
  飛びつきながらボールをさばくぼくらの姿は
  400mトラックの陸上競技場でも
  コウモリのようにしか映らなかったろう
  だんだん夕焼
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