歩み/鷲田
揺るぎない態度が歩むアスファルトの硬さで
両腕を失ったのは誰か
絶えず歩み続けることで
身体の抱擁を犯されたのは誰か
足跡は連なり
その道は物語を一つ語りだす
独りの表現を誇張し
劇化し、スポットライトを浴びせ
各々を集め、街を形成する
五体はかつて満足だった
五体の中に精神の要素は排除され
身体の喪失は感情の綻びを後悔した
身体の喪失は精神を被害者にさせ
精神の加害者になった
表現は蒼く
くすんだ灰色が染まり
太陽の光に反射され
色を蒸発する
透明な空白は言葉を奪い去り
時間は表現を掻き集め
その群れの個を“あなた”と名指しする
道端に落
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