天秤/為平 澪
 
何も持たなかったはずなのに 多分荷物は重くて
何を詰め込んだかわからないのに 大切で
手放せないまま 逃げるように出てきた都会

何をしたかったのか 私の頭の標識は
真っ白に作り上げた 大きな矢印が看板
迷って 転んで キョロキョロした顔を向けて
やっとの思いで前を向いたら 舌打ちされる

守るものは自分、ではなく、
自分の正直さ、というものだと
両腕で抱えてみると 我儘、と、傲慢に
早変わりする 人の秤

        ※

何も持てなかったはずなのに
往復切符を買ってしまう臆病者
(その理由を、聞かないでください。)


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