瞬間/鷲田
 
質を
われわれに与え

秋の終わりの夕暮れに
四季の無い気温の摂氏温度に
春の陽光の湧き会う人達の心の中に
世界は喜びの瞬間を細胞の隅々まで浸透させ

だが、孤独はと言うと
瞬間に生きるのだろうか

孤独はというと北風に向かって
太陽が落ちる地平線の水面に
波となって砂浜を濡らし続けている

だが、悲しみはと言うと
瞬間に生きるのだろうか

悲しみはというと南風に向かって
記憶の彼方を目指し、
南太平洋を横断している
あの小鳥と共に
永遠に向かって飛んでいる

(感情と共に生きなさい。ただし、その感情は違う性質を持っていることを学びないさい)

西暦2015の街では無数に弾ける喜びの瞬間といつ終わることのない孤独と悲しみが共存し、人々は次の日のカレンダーを開き、又、日常を始めている

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