〈ある〉のエロスー新生する記憶/たけし
〈
夜の森に
一人分け入り
いつしか
方向感覚を失い
冷えていく身体
噴き出す脂汗
空気もんわり動かず
渦巻き出す暗闇
意識 拡散し
存在感覚 失い
森の中は森の奥
森の奥は森の中
底の底から
恐怖恐慌襲いかかる
混沌と旋回ヒタスラ
吸う吐く息ユックリ
〇
すえたカビの臭い
甘やかな蜜の匂い
漂う漂う
照らす懐中電灯の先
浮き上がる
黒々としたイキモノ
沈黙のうちに
在ることの鮮烈
カブトムシ
カブトムシ
樹液ヒタスラ吸い動かず
手を伸ばし掴み取り
確かな硬さの感触
絡まり蠢く脚の刺
指先に走る痛み
在る己!在る己!
鮮明な意識
俄に立ち上がり
森の奥は森の中
森の中は森の億
包まれる歓喜に
俺は静か立ち尽くす
この奇妙な場所
地球の上に
戻る 編 削 Point(2)