しゃぼん玉/鷲田
 
少年は挨拶した。
周りにいる人達は彼を無視した。
前回会った時、少年は彼等を無視したから返事が返って来なかった。
正確に言うと、少年が前回挨拶をしなかった理由は、
無視したのではなく、物思いに耽っていたからであった。

彼等は少年を愛想の無い人だと思っていた。
少年が物思いに耽っていることなど、全く知り得もしなかった。
少年は傷ついた。
自分が相手にされていないものだと思い、居心地が悪かった。
物思いをしていた自分が周りにどのように映っていたかを全く気が付かずにいた。

物思いは孤独だ。
行為そのものが孤独で、社会との関係が遮断される。
少年は社会のことを考えていたのに
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