救いのない・・・/ヒヤシンス
 

 晩秋の風は悩みをはらみながら私の窓辺にやってくる。
 ああ、悩ましい。私は上手に言葉を紡げない。
 限界を超えたところに真実があるのなら私はそれを見たいと願う。
 私の存在に真実があるのなら私はそれをどう表現しよう。

 以前の私はたやすく忘却の泉に辿り着けた。
 そのくせ一度たりとも泉の水を飲んだことはない。
 必要に迫られたわけではないがすべては自分次第だった。
 私は水を飲んだふりをして実際は飲んでいなかったのだ。

 分からない。過去を清算するということは過去を忘れ去ることなのか。
 過去をすっかり忘れてしまって新たな人生を生きるのか、
 それとも過去を経験と捉えてその上に新たなレールを引いてゆくのか。

 悩みの風が私の体を吹き抜けてゆく。
 人間はたった一人で決断を下さなくてはならない。
 それならばいっその事人間になんてならなければよかった。
戻る   Point(9)