救いのない・・・/ヒヤシンス
晩秋の風は悩みをはらみながら私の窓辺にやってくる。
ああ、悩ましい。私は上手に言葉を紡げない。
限界を超えたところに真実があるのなら私はそれを見たいと願う。
私の存在に真実があるのなら私はそれをどう表現しよう。
以前の私はたやすく忘却の泉に辿り着けた。
そのくせ一度たりとも泉の水を飲んだことはない。
必要に迫られたわけではないがすべては自分次第だった。
私は水を飲んだふりをして実際は飲んでいなかったのだ。
分からない。過去を清算するということは過去を忘れ去ることなのか。
過去をすっかり忘れてしまって新たな人生を生きるのか、
それとも過去を経験と捉えてその上に新たなレールを引いてゆくのか。
悩みの風が私の体を吹き抜けてゆく。
人間はたった一人で決断を下さなくてはならない。
それならばいっその事人間になんてならなければよかった。
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