ガム/あおい満月
かれた傷口を
赤くうねる小さな生き物がおおいつくす。
くちゃくちゃ、
ガムを噛むような音を引き摺らせて、
生き物は私の腕から風に身体を泳がせる。
***
部屋中に赤い生き物がうねり出す。
壁の隙間や窓の燦からあふれでる赤い生き物は、
私の足元をのぼって耳から浸入して、
網膜を食んでいる。
視界が赤くなる。
私は目を開けてはいられない。
涙のなかで、
赤い生き物たちは
交尾を繰り返す。
染色体のような、
この赤い生き物は、
昔、友だちと水溜まりで見つけて、
踏みつけて遊んでいた糸蚯蚓に似ている。
糸蚯蚓の怨念が、
増殖を繰り返し、
私たちを蝕みにやって来る。
赤い夜は永遠に続く。
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