ウータンクラン/イシダユーリ
 
  俺の身体か


お姉さんも妹も
お母さんに求められなかったから
どこかに行ってしまった
戦争の前に
家族が
お前は
息子でいなければ
いけないと
言う
ほら
はやく
こわい
と言わなければ
ならない
俺は弱い
と言わなければ
ならない
全部
お前にくれてやりたい
俺は弱い
俺は犬だ
俺はかわいい
俺はこわい


お前はかわいい


わたしの耳元には
本当は震えているんだろうという声が
わたしが息子でなかったように
お前のからだも
切り離されている
こわいと
つぶやけばいい
わたしは
お前とは
はじめて会った
あの子どこにいったの
いまながれている声は
どういう意味を持っているの
どうして音がくりかえされているの
あの子
どこにいったの
もう
あの子は
息子ではない

お前は
鏡の中の
お前に
言えばいい

お前は
もう
息子じゃない


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