蜜柑/あおい満月
 

転ばぬようにといつも支えてくれたあの手を思い出す。
そう、あの手だ。
どうして、今まで…。
気がつかなかった
自分の浅はかさを後悔する。

唇を噛みしめると、
酸っぱい味がした。
熱が皮膚から溢れ出して、
帰宅中の総武線を下りから上りへと引き返す。

会いたくて、会いたくて、会いたくて、
繋がらない電話を握りしめる。
熱いものが、頬を伝う。
数分後、
掛かってきた電話に
私はあたたかな安堵で満たされていく。
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