リコリス/
亜樹
レントゲンに映らない黒い綿埃が私の肺にたまる頃、
今年もあの赤い花が寂しい寂しい休耕田の、
それでも草だけは刈った畦を彩り、
そうして見る間に色あせていく。
息を吸う。
吐く。
吐息に混ざる白い色。
静かに立ち上る煙は、
物言わぬ夏の名残を焼いている。
もう何も動かなくなる季節に、
もてあました黒。
夏の影。
間違えようのない悪意。
凝り固まった飴は、
やっぱり今日もまずかった。
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