鎌倉の朝 /服部 剛
鎌倉の朝は、なぜか散歩がしたくなる。
低い緑の山間から
燦々と顔を出す陽をあびようと
玄関のドアを、開く。
日頃住む街よりも
澄んだ風を吸いこみ
図書館の庭に足を踏み入れ
ベンチに腰かけ、瞳を閉じる。
――光合成
木々の葉の囁き
川のせせらぎ
掃除夫が枯葉をはいている。
少し離れた国道を車は遠ざかり
世界は今、目覚めようとしている。
瞳を閉じた、黙想のひと時
日々の情景は音楽になる。
(ここは古都鎌倉の國…)
燦々と降り注ぐ陽が
私の全身をしみじみと浸して
初冬というのに
シャツの衣が、暖かい。
今日の日に与えられた
この命
胸に手をあて、ゆっくり瞳を開く。
私の古びた靴さえも
今朝は爽やかな表情を
揃え
庭の出口の先へと続く
鎌倉の小道の方へ
すでに、爪先は歩き出している
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