光のプラットホーム/ありか
 
列車のベルが心臓直下で響きわたる
蒼白い片道切符を握りしめた駅
朝露で濡れた手は容赦ない
初夏の日、快晴、音楽、赤血球
揺すりあううちに まとめて角がとれて

本能が吹きすさぶ山頂のこの駅では
太陽の幼子たちが楽しげに遊んでいる
熱圏をぬけた先にうつり込む
わたしの無機質な顔相も
烈火のごとく日周運動にかき消される

どこまでいっても言葉どまり
あの日の呟きが 耳から離れない
足を交互に出して背景を後方へ追いやる
ホームに向かう人々をぬって進む
別々の前を向きまっすぐ歩いているのに
ぶつからない不思議

あの日瞳をふせて
どこにでもある涙を 彼女は拭いた

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