しらす/あおい満月
で膨張して
食い荒らされるのが怖いのだ。
しらすは死にながら生きている。
いつだったか、
駅のホームの隅に白い吐瀉物を見つけた。
そのなかに、 しらすがあった。
しらすは内蔵の皮をくわえながら、
大きな目で、死にながら生きていた。
誰もが皆、 何かをくわえている 何かを見つめながら。
わたしはしらすの想像に、脳髄を喰われている。
明日また、ご飯の上には
大量にしらすが盛られている。
想像の菌が、また増殖する。
※『文芸思潮賞』第三次予選通過作品。
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