ハリボテ/凍月
解体工事中の廃ビルから
鉄材が鳴り響く音が
突然、微かに聞こえた
それは完全に想像
理由も無い幻聴
壊れた仕掛けを隠すハリボテも壊れた
くたびれた様子で
うつらうつらと
霞がかった湖へ小舟を漕ぎ出す
そんな君を支える背中が
僕のものであれば良いのに
歌うように
世界は美しいと
奏でる君の
ふとした止まり木に
なれれば良いのに
そんな言葉が
がらがらと音もたてずに崩れた
廃墟に差し込む光
一輪の花を見つけた
でも
表す言葉は「ニセモノ」で
摘むと萎れて枯れてしまったんだ
解体工事中の廃ビルから
鉄材が打ち響く音
壊れた仕掛けを隠していた
ハリボテさえも壊されてしまった
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