海の黒鍵/瑞海
新月の夜は
決まって聴く曲がある
深い海に溶けていくような
ピアノの音を
聴きながら
海辺に歩いて
拾い集める
黒の欠片
袋いっぱいに
溜まった黒を
涙と一緒に飲みながら
生きてゆく
ずうっとずうっと
生きてゆく
海に膝まで入ると
爪先から黒が溶けてゆく
海に攫わせないように
私を支えながら
溶け続けている
この黒は
いつか壊したあのピアノの
その一部だったのだと
悟る今は満月
涙が止まらなくなり
結局自分に戻ってきたのだと
気づく時には
もう海の底
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