至福/小川麻由美
 
あなたの愛情が重いと
夫に言ってしまった

涙が出るがままに
小さなノートの片隅に
小さな詩を書いた
暴力的な詩をカモフラージュにして

「伴侶よ幸せになっておくれ
あなたこそ幸せになる権利がある
自分では気付いていないと思うが」

それを 目にした夫
「君がいてくれれば幸せなんだよ」
ありったけの勇気で
ありったけの思いをぶつけてきた

私は驚き そして途方にくれる

これが幸せなんだと噛み締めながら
私は私のままで生きていこう
夫にたくさんの迷惑をかけつつ
器からこぼれ落ちる程の幸せ

強い薬にも耐え
重い脚を引きずり
一滴一滴の点滴に祈りを込めて

夫の愛情は決して重いのではなく
広いのだと身に染みた
こんな私にとっては
奇跡のような日だった
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