原点を探して/あおい満月
 
 何かが書きたいと、パソコンの画面に向う。するとどうだろう、白紙のワード画面が巨大化して此方に近づいてくる。私は呑み込まれる。そんな夢を幾度か見た。画面の内部は、埃臭い舞台裏のような場所だ。壁や床や天上に、詩や新聞やエッセイ、小説、ルポルタージュの切れ端が転がっている。ここはきっと、私の記憶の内部なのだ。「記憶の内部」と聴くと何やら海馬のような渦巻きを連想するが、私のそれは寧ろ一つの部屋なのだ。実際私の部屋はいつも散らかっているが、それ以上に散らかっている。散らかっているものをかき集めてみると、どれも愛しいくらい大事なことばたちだ。しかしことばたちは、手にした瞬間に泡のように溶けて消えてしまう。ま
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