時雨/非在の虹
時雨が足元にうずくまる真昼
また丸い空洞の空間から埋まってゆく観念がある。
静けさを避けて 腫瘍のように広がる言葉
巻き上げたほこりすら元の地に返す言葉
すべてに人の顔を描かずにはいられない画家のようだ。
そうではない。幹の根元を濡らしている鉄の塊だ。
ああ、時雨が降るじゃないか。
田畑の泥の中から立ち上がる人々
肛門に稲の苗を植えて
午後の食物を見つめる男女。
見つめ合う男女が濡れた側面にこだわる。
すべてが濡れてしまった。
激しい後悔の念。
鏡面を遮るざらざらのカーテンを身にまとい
体の片隅に光る動物が這いまわり
にぎにぎしく歩き出す装飾過多の眼差しがびしょぬれだ。
自暴自棄の言葉が
耳、耳、降る、降る
雨の降る寒い地平に木霊している。
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