空白の壁の前に立ち、ただひとつを独白するために/北街かな
 
空にまで達した空白の壁を前にして立ち
独白する言葉をえらぶために
たったひとつの日本語をあみだすために
私はたくさんの言葉を集めてまぜた
もうひとつの宇宙になりますように
星座を構成しますように
銀河の引力を回り込んで真に中心に達しますように
物理法則たちが存分にぶつかりあいますように
確定できない多数の消滅と誕生に間近で立ち会えますように
実在と非実在の陳述と忘却を生と死の時間の外側で祈念できますように
ただひとつの真なる日本語のくみあわせを念願して
独白する言葉をえらぶために
私はたくさんの言葉をまぜた
必要とされた祈りの記述はまず最低限の音素
加えて知る限りに知り
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