冬の釣人 /
服部 剛
北風の只中を防寒靴で歩いた、僕は
あの日の旅路を手にしたペンで、筆記する
*
――記憶に蘇る、海の匂い
遠くに見える、断崖に近づくほど
潮の香りを鼻腔に…吸いこみ
断崖の絶壁に、胡坐(あぐら)を掻いて座るひとは
瞳を閉じ、長い釣糸を遥かな眼下の荒波の
潮目に向けて垂らし――待つ
黄金ノ魚
針に喰いつく、あの瞬間を
戻る
編
削
Point
(4)