深夜に/
非在の虹
夏のあとさきもなく滝が落ちる。
滝の水流が私の口元までほとほととおとないて
落ちる。
冷めるものは冷めるだろう。
私の行く手を遮るのは過去ではない。
地虫のような羽を持つ落ちてゆくもの。
音もなく姿もなく落ちてゆくもの。
私の体を冷たい手が抱く。
この手に導かれて
抗いもせず私は姿見の中に姿を隠す。
裏側に果てしもなく流れる落ちる水。
喉元を下る水。
深夜の水道の栓を幽かに締めて
寝床に沈む。
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